「はぁー」また一つタメ息が自然と零れ落ちる。
旭君に背中を向けられても、これから向かう目的地は同じな訳ですから……
少し離れて二人の後ろを歩いていた私は向かい側の一番端の席に坂口さんと並んで座った旭君を確認する。
私の席から対角線上の端に座って居る旭君はこの場所では一番遠くに居ることになるけど、10人程が座れるテーブル席では差ほど距離がある訳もない。
視線を向けていなくても否が応でも二人の姿がつぶさに目に飛び込んでくる。
「ねぇあの人。どうしてここに居る訳?」
またしても飛鳥ちゃんは私の知りたかったことを先回りで訊いてくれた。
「彼女は坂口蝶子さん。俺と旭と同じ大学。蝶子ちゃんと一緒の時に遼から連絡が入ってさ、彼女も祝ってくれるって言うから連れて来たんだよ……お祝いは人数が多い方が良いだろ?」
嬉し涙なの?悔し涙なの?
判別不能な涙をポロポロ零しながらもう既に出来上がっている後藤君は坂口さんがここに来た理由を教えてくれて、その後もブツブツと誰に聞かせるとは無しに喋り続けている。
「……まさか。上杉さんと遼が学生結婚するなんてなぁ……
美人妻。そのうえ将来は約束されたも当然ってことだよな?
就職の内定すら貰えない俺と遼の違いってなんだ?」
私がトイレに立っていた短い時間で、酔ってしまったの?
後藤君の様子に頭を傾げるけれど、この後私も人のことを言えた義理ではなくなるのです。


