絶対やせて貰います。


旭君が現れると聞いて動揺した私は取り敢えずトイレに向かった。

いつも簡単なメイクしかしないから涙で流れ落ちたからと言って大騒ぎするほどのことでも無いし、正直スッピンとの違いも良く分からない。

それでも昨夜に続き泣き過ぎて腫れた瞼がとても重い。

どこか憂いを帯びた切なげな表情の女性が私を見つめている。

『まるで別の人みたい……』

そんな思いで鏡に映る自分の顔を眺めていた。

「はぁーーー」

深い溜息を吐いたてから席に戻る心の準備をしている時にある人が現れる。

「……もう後一押しって感じ?」携帯を片手に通話相手と会話をしながら一人の女性が入って来て、驚きに思わず「あっ」と声が出てしまったけれど、その人に私の声は届いていないらしい。

こんな偶然ってホントにあるんだなって、不思議な気がしたのは……その人が一年前にこの場所で会った人だったから。

坂口蝶子さん。

彼女は私の存在には全く気が付いていない。