「迷いのない晴れやかな表情だね。こいこちゃん」
堺さんにそう言われてドキッした。
きっとそうなんだろうなぁーと自分でも納得していたからだ。
「あぁー余計なこと言っちゃったかな?」
堺さんはブツブツと呟いている。
「……旭君に思いを告げてちゃんと気持ちを昇華したのち、傷心のこいこちゃんの隣で寄り添いながら時間をかけて俺に振り向いて貰うってのはどう?」
「はぁー」
どうも告白前から堺さんの中では私は失恋が決定しているらしい。
「まだ告白もしてないのに……私、失恋が決定してるんですね」
やっぱり私じゃ旭君に釣り合わないのかな?またしてもイジイジと気持ちが萎えてしまいそうになる。
「ハハ……こいこちゃん、後半の話は見事にスルーだね。俺、結構真剣なのに……」
苦笑いの堺さん。
だって堺さんには今日会ったばかり。
大人なだから私の気持ちを軽くするために冗談を言ってくれている。
……そうとしか思えなくて、もちろん本気だなんて思わない。
「あまり遅くなると部長に怒られるから帰ろうか?」そこで話を打ち切った堺さんは私を自宅まで送ってくれた。
父に玄関先で挨拶をしてから予約していたタクシーに乗り込む前に
「それじゃ、またね。こいこちゃん」その笑顔は最後まで掴みどころが無かったけれど……
怒涛の一日をスッキリとした思いで締めくくることができるのも堺さんから掛けられた言葉のお蔭だと感謝している。
本当にまた会える日が来るかは分からないけれど……
「はい。気を付けて」と返事をした私はタクシーが見えなくなるまでその後ろ姿を見送った。


