食器を下げて洗い場を担当しているバイトの子に引き渡したところで和田さんから声が掛かる。

「こいちゃーん」

「はい」

「いま、こと君から連絡があって……

『事故で電車が止まってて迎えに行けなくなりました』

そう言ってたけど……帰り大丈夫?」

心配そうな表情で帰りのことまで気遣ってくれる優しい和田さん。

「大丈夫ですよ」

(そんなことより、ことちゃんはケガしなかったかな?)

「…いちゃん、聞いてる?」

そっちの方が心配で和田さんの言葉をうっかり聞き逃していた。

「いえ、すみません」

「こと君はケガも無いそうだから

『安心してください……間に合わないだけです』

だってさ……ハハハ

こいちゃんが自分の事を心配するのが分かってて、

ワザとおどけてみせるから可愛いよね?」

「はい」

親ばかならぬ”姉ばか”な私は、自分よりかなり大きな弟を可愛いと言われたのに躊躇う事無く返事を返した。

「それなら、鯉子ちゃんは俺が送って行きます」

そこへ突然会話に割り込む声がして、その方向に和田さんと二人して視線を向けると堺さんがニコニコと微笑みながら立っているではないか……