「あのーたぶん違うケーキだと思います。このケーキ焼いたの私ですから……」

やんわりと勘違いだと告げて片付けを再開する。

そこに突然イケメンさんの「あぁーーー」の大声が響き一同が唖然としている。

「ねぇーきみ、錦野部長のお嬢さん?」驚きに目を瞠るイケメンさん。

確かに父はある会社で部長職についてはいるが……

「あっ!これ……俺の名刺」

そう言って手渡された名刺には父と同じ会社名と所属部署が書いてあった。

「この店、実は部長に教えて貰いました。

だからやっぱりこのケーキは食べた事があったで正解」

そう言ってにっこりと微笑んでいる彼は父の部下なの?

「堺直人です。錦野部長にはいつもお世話になってます」

こんな時どう挨拶したら良いのか正直分からなかったけど……

「娘の鯉子です。父がいつもお世話になります」

この返答で間違いないですか?

そして不思議に思ったのは、

『パウンドケーキを食べて何故私の父が分かったのですか?』

頭はクエスチョンマークでいっぱいだった。

「俺、錦野部長と弁当を交換してたんだよね。

……そしてそのお弁当に時々ケーキのデザートが付いてました」

堺さんの言葉でやっと真相が判明する。