旭君が何て返事をするのか気になった私は真横から旭君の表情を仰ぎ見る。

「すみませんがそれは出来ません。

今から彼女とデートの予定なので……」

「えっ?」

清水店長の謝罪の言葉やバイトに戻って欲しいという懇願も『出来ません』の
一言でバッサリ断った事や『彼女とデート』って言葉が衝撃過ぎて心の中は
プチ・パニック状態。

「そうか……分かった……」

悪いのは清水店長なのに……

本当に反省しているみたいで、あんな沈みきった声を出されると思わず同情してしまう。

でも旭君の言葉はあれで終わりでは無かった……

店長に向かって振り返りながら言葉が続く。

「今日はダメだけど……明日なら良いですよ。

でも今日は代わりの人をちゃんと手配して下さい

無理なら清水店長が二人分頑張るしかないけど……」

ニヤっと笑った旭君の表情はまるで悪戯が成功した時のやんちゃ坊主みたいに見えて、思わず口を開けたままポカーンと見つめてしまった。

「あ…旭…お、お前……」

はぁーーと深いタメ息を付いて項垂れる清水店長。

それでも旭君が戻ってくれることに安堵したようで

「分かった……また明日な」

大神夫妻に挨拶をした後はホッした表情を浮かべ清水店長はこの場から去って行った。