「待たせたね」
にこやかに現れた大神さんと少し距離を置いて沈んだ表情の清水店長が対照的な何とも微妙な構図を織りなすのを眺めながら三人して椅子から立ち上がる。
「それじゃ俺たちは行こうか?」
差ほど時間が経っていないから旭君はまだ清水店長の顔を見たくないのかも知れない。
それで私は直ぐに「うん」と返事をした。
買い物は何もこのスーパーじゃないとダメって訳じゃない。
旭君のバイト先だから少しでも売り上げに貢献出来たらって意味で来てただけで……
誠実な旭君をクビにするような店長が居る店には今後来ることもないだろうなと思いながら大神夫妻に挨拶をする。
「眞子さん。料理教室の件で連絡入れますね
ジュースごちそうさまでした」
「うん。待ってる
今度は悟の驕りで美味しい物、食べに行こうね」
眞子さんの言葉に何と反応したら良いのか分からずに曖昧に微笑んで
「お先に失礼します」
軽く会釈をして旭君と出口に向かって歩き始めたら
「あ…旭…」
旭君を呼び止める清水店長の声に旭君の歩みが止まる。
でも振り向いて清水店長に向き合う事はせずに体は出口に向いたままだ。
「悪かった……俺が間違ってた……
だから今日も午後から出て来てくれないか?」
大神さんと一体どんな話し合いがされたのかは分からないけれど清水店長は旭君に謝罪してクビを撤回したいらしい。
旭君に午後からバイトに来てくれないかと訊いているし……


