そこへ激昂したような大声が段々と近付いて聞こえてきたから私も眞子さんも驚いて体がビクンと硬直する。
「清水先輩のしている事は詐欺行為と一緒です。
それが非売品であっても……」
「偉そうに……正論ぶりやがって、此処では先輩って呼ぶなって言ったろ店長って呼べよ。
本社のお偉いさんに『用意できるよね?』って言われたらこっちは黙って従うしかないだろ
俺の今後の査定にも影響が出て来るんだよ」
「それじゃー会社ぐるみでの詐欺行為なんですね?」
「そうじゃない。旭……今回は見なかった事にしてくれないか?」
先程の高圧的な物言いとは打って変わり、旭君に縋るような話し方をする店長さん。
「俺はいつも真剣に仕事に取り組む清水先輩を尊敬していました……
でも先輩は変わってしまったんですね。
不正を持ちかける人がちゃんと約束を守るとは思えません。
もし問題が起こったらきっと先輩に責任を押し付けて知らない振りをすると俺は思います。
だからこれはちゃんと貰うべき人の手に渡すべきです」
力強い言葉の後にガサッと物音がして
「お…お前それをどうするつもりだ」又もや声を荒げて叫ぶように話す店長とは対照的に
「今から手違いがあったと詫びてお客様の所に届けてきます」全く動じずに穏やかに話しをする旭君


