「それって、こいちゃんが傍に居なかったら私
大変な事になってたのね……命の恩人だわ」
皆に“こい”と呼ばれていると話したら
「私もこいちゃんって呼んでいい?」
人懐っこい笑顔でそう言った大神眞子さんは私より少しだけ年上だと思ったのに
意外なことに9歳も年上の30歳、結婚2年目だと話してくれた。
「命の恩人は大袈裟ですよ。
ここまで抱いて連れて来たのは私の友人ですし……」
眞子さんが頭を床にぶつけない様に必死に支えていたけど、命の恩人は大袈裟すぎる
きっと誰だってあの状況なら同じ事をしていた筈だもの。
「違うの……私の赤ちゃんの命の恩人なの」
まだ全然目立っていないお腹に優しい表情で手を当ててそう言い切る眞子さん。
彼女の話だと久しぶりに旦那様と外出できると喜んでいたら、仕事の電話が引っ切り無しに掛かって来た所為でイライラしていたみたい。
その電話の所為で予定に無かったスーパーへの寄り道が決定
まだ仕事の話を続ける旦那様の車から勝手に飛び出したそうだ。
「あぁーこれで家にUターンが決定だわ……」
見た目にも気落ちしているのが分かるから何だか気の毒になってくる。


