青白かった女性の顔に少しだけ色が戻って来たように感じてホッしたのも束の間

突然鳴り出した音楽にドキッとして慌てて音の出どころを探すとそれは彼女のバッグの中から流れ出ていた着信音だと分かった。

他人の電話に勝手に出るのは正直躊躇もあったけれど……

緊急事態だからと心を決めてスマホをタップする。

「マーコ……今どこ?」

耳に心地良い少し低音気味の声が女性に居場所を聞いている。

『彼女……マーコさん?』

一瞬言葉を発するのが遅れたもんだから

「マーコ……まだ怒ってんの?ごめん。でも後少しで仕事終わるから……」

二人は仕事が原因でケンカをしたらしく男性からの謝罪の言葉が続きそうで慌てて声を出す。

「あの……マーコさんですが……」

男性に事情を説明しようとしていたら私の声を聞いて別人だと分かり異変を感じたのか、強い口調で聞いてくる。

「君、だれ?マーコはどうした?」

その声に一瞬怯んだけれど、気を取り直して先程起こった事を簡単に説明する事にした。

私の話を聞いた男性は助けてくれた人を怪しんで悪かったと大変恐縮して詫びてくれたし

「救急車を呼んだ方が良いですか?それとも迎えに来て下さいますか?」私の問い掛けにも

「私も敷地内にいます。今すぐ迎えに行きますから……」

そう返事を返したと思ったらもう既に切れてしまっていた。