なんとも気まずい雰囲気になってしまった間を救ってくれたのはマリアさん。

「こいちゃん一緒に食事にしましょう。

あさひと携帯の番号を登録し合って……

それからあさひに家まで送らせて……それだと私も安心だから」

マリアさんはにっこり笑顔で反論の余地のない提案をしてくるから私は黙って頷くしかなくて、

「分かりました、ご馳走になります」

「はい。こい先生の指導通りにちゃんと出来上がってるか、ご試食お願いします」

可愛くウインクするマリアさんのお蔭で、ぎこちなさは拭いきれないものの逃げ帰らなく良かったと安堵した私だった。

家に連絡を入れ小岩井家で夕食をご馳走になる事、それから旭君が自宅まで送ってくれるから心配しないでと伝えたら「旭君に会わせてよ」と母が言う。

イヤイヤイヤ……なんか勘違いしてないお母さん?

旭君は高校の同級生ってだけだから……

余計な詮索されてこれ以上気まずい思いをしたらダイエット作戦自体が頓挫しそうだからやめてよ。

「今日は無理……いつか機会があったら紹介するから」

「こいがそう言うなら仕方ないわねー分かったわ」

渋々ながら私の意思を汲んでくれたみたいでホッとしたけど、また何時「旭君に会わせろ!」言い出すか分からないなぁーと「はぁーー」とタメ息が漏れた。

「こいちゃん、どうしたの?」

すっかり機嫌の直った旭君が私を心配そうに見ながらそう聞いてくるから思わず頭で考えるより先に口から言葉が飛び出してしまったから仕方ない。

「母が旭君に会いたいって言うから今日は無理って返事したけど……

またいつ言い出すか分からないから……」

「えっ?そんなこと……」

そんなことって……

旭君にとっては”そんなこと”かも知れないけど、母の詮索されてお互いに気まずくなったらダイエット作戦が遂行出来なくなる憂慮を含んでいるのに……

そう思うのは私の考え過ぎなのかな?