旭君の人柄を考えると八つ当たりとかは無さそうだし、これは私に原因があるのかも知れないと思えてくる。

心当たりは全く無かったけど、このまま帰ってもモヤモヤと心の平安は訪れそうにもないから直接聞くしかないかと口を開いた。

「私、何か気に障る事したかな?」

ドキドキしながら旭君の様子を窺う私の耳が「「ブッーーー」」と変な音を拾う。

それはマリアさんとひかるちゃんが笑いを堪える為に覆った口から洩れた音らしく、私の問いかけに答えてくれたのはマリアさんだった。

「こいちゃんが旭に”何かした”のでは無くて……

こいちゃんが”してくれなかった”のが旭が拗ねてる原因なの」

キャハハハと声を出して笑っているマリアさんとひかるちゃん

置いてけ堀な私と何故か顔の赤い旭君、全然意味が分かりません。

「あのー出来ればもっとハッキリ言ってくれたら助かります」

「あのね……こいちゃんの携「こいちゃん俺とも携帯番号交換して」

マリアさんに全てを言われてしまう前に旭君が慌てて言葉にしたのは、私にとっては意外な事柄でしかなかった。

週末にマリアさんやひかるちゃんの番号を登録する時に旭君の事を考えなかった訳じゃないけど……

「旭くんに親切にして貰ったからって、それを理由に付き纏うなんてことしないで頂戴ね」

吉田璃音さんから言われた言葉。

もう3年以上経っているのにも関わらず私の意識下に深く浸透していて適切な距離感を持って接するようにしようと頑なになっていたのかもと反省する。