「どうして旭君やお母さんに相談しなかったの?」

「お兄ちゃんやお母さんの前で完璧に良い子演じている彼女を悪く言っても誰にも信じて貰えないと思ったから」そう言われては返す言葉がない。

私も旭君の元カノ『吉田璃音さん』の本性を知る前は旭君とお似合いの”眼福カップル”と思っていた。

保健室で彼女の演技力を目の当たりにした私だから余計にひかるちゃんが”誰にも相談出来なかった”その気持ちが良く分かる。

『彼女が先程見せた態度は自己防衛だったのか…』そう思ったら聞いているこちらの心がズキンと痛くなった。

「だから私、こいちゃんも吉田璃音みたいな人に決まってるって思って、

精一杯虚勢張って見せたの……

めちゃくちゃ感じ悪かったでしょ?

本当にごめんなさい……」

ひかりちゃんの落ち込んだ気持ちを少しでも明るくしてあげたくて、先程見て貰った動画の後に保健室で起こった話を身振り手振りを加えて面白おかしく聞かせたら声を出して笑ってくれた。

「あはは『変面』って分かる気がする。

私も見たかったな……

私にもカンナさんみたいな味方が居たら彼女をギャフンって言わせられたのに……」

「私がひかるちゃんの味方になるよ。カンナちゃんみたいには頼りにならないけどね」

ニッコリと見つめ合った私たち、もう一人大切な親友ができた瞬間だった。