「それでは、今から全校生徒で鬼ごっこをします!」

…ゴクリ。

「あ、もちろん逃げるときは喋っていいですよ。ただ、見つかりますけどね。」



「それでは、スタート!あと1分で鬼が出てきます」

…どうしよう…

パニック状態…

「ねぇ、凛、どうしよう、ねぇ、ねぇ、凛。私死ぬの?やだやだやだ。」

莉奈は少し狂ってきている。


「大丈夫、莉奈。死なない。これが、夢か現実かはわからない。でも、とにかく生きよう。」

「腐った友情ですねぇ。そんなもの、『捨ててしまえ』ばいいのに。あ、後30秒です。」

…教室がざわざわしている。

彼氏彼女に感謝の言葉を言う人、好きな人に思いを伝えて実った人、実らなかった人、泣き崩れる人…

みんな動こうとしない。

「…莉奈…。行こう。ここにいたら捕まる。」

私は、莉奈の手首を掴んで、教室を出た。

うわ…

すごい人…

廊下は歩けないほどぎゅうぎゅう。

「10、9、8」

やばい…

「5、4、3」



「2、1」

「莉奈。生き残ろう。」

「0。鬼さーん。どうぞー。あ、ちなみに鬼は10人ねー。」


全校生徒、760人の半分以上が今動こうとしている。

…そりゃ混むわな。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


…恐怖の声が聞こえる。もはや、それしか聞こえない。

どうしよう…

「凛。逃げよう」

「うん。絶対に。」