大人の恋の終わらせ方

「今さらですよ、榊さん…社長の時は、辞めれなかったら、この人と結婚しても良いかな…って思っていたのも本当なんですよ?」

ふふふ…と鳴海は、めったに語らない本音を語った。

「…じゃあ、どうして」

「榊さんが言ったじゃないですか、自分は冷たい人間なんですよ…綾子さんは、自分達兄弟がふり回してしまった方ですから、ちゃんと幸せになってもらいたいんですよ、榊さん…」

「それは…」

「という訳で、がんばって下さいね、榊さん。じゃあ、また連絡します」

と言って、鳴海は一方的に電話を切った。



「…何て言ってた?あの男」

暗い車内の後部座席から、綾子は榊に声をかけた。

「…お答えしかねます…」

「あっそう…じゃあまた、付きまとって聞き出してやるわよ…」

綾子はそっぽを向くと、外を見た。

「…そうして下さい、今度は歓迎しますよ…」

榊は助手席に置かれた、鳴海用に用意していたタキシードを見ると、バックミラー越しにウエディングドレス姿の綾子を見た。

「…ばっかじゃないの?」

「良く言われます…」

そう言って榊は、下ろしたてのタオルを綾子に手渡した。

「…何で、えーちゃんタオル…?」

綾子はタオルを広げると、まじまじとタオルを見た。

「…好きなんですよ、良かったら差し上げますよ…?」

「いらないわよ…でも借りるわ、ありがとう…」

綾子はタオルで顔をおおうと、上を向いた。

「どう致しまして…」

榊は車を発進させると、夜の高速を都心に向かって走らせた。


後部座席から、かすかに聞こえてくる…泣き声を押し殺す気配を感じながら…


(終わり)