「危ない」



グイっと腕を引っ張られた。



「割るぞ」



並ばれた硝子細工を指して、坂下が腕を引っ張ってくれていた。




小樽の硝子工房。

修学旅行生で店内は人が溢れていた。

色とりどりの商品はどれも繊細で、勿論ぶつかって落ちてしまえば割れるガラスでできている。

割れると勿論怪我をしかねない。

皆かわいい硝子細工に夢中で、確かにいつ誰がぶつかってもおかしくはない。

現にさおりも小さな動物の置物にテンションMAX。

後ろにいた女子グループがお喋りをしながら商品に手を伸ばしていた。



「あ、ありがとう」

「野上って、しっかりしてそうなのに意外とそうでもないよな」

「返す言葉もございません……」



剣二や学校の先生にもよく言われる。

光太には、しっかりしなきゃと思ってると言われたことがある。

その言葉が一番的を射てると思った。



「高槻に買うの?」



キリンとパンダ、ウサギ、イルカ、カニの置物を手に取っていると、坂下が覗き込んできた。



「うん。『メロウ』のマスターと、利也さんと華澄さんも。あと、ここで家族の分も買おうかなーって」