わたしはただリードされるままに踊っていた。
曲が中盤に入っても自然に踊れる。


こう踊っていると…なんだか懐かしい




「…ふふ」


声が聞こえた方を向くとロミオが笑っていた。


「なんだか、懐かしい感じがするんだ。なぜだろう?前にどこかで会ったかい?」


知的な笑みを浮かべるロミオを見ても、なにも思い出せない




「いいえ、無いわ。
こんな目立つ人と会っていたなら覚えてるはずたもの。 」




ロミオは、金髪で長身の高そうなタキシードを着こなしている。
綺麗なブロンドの髪に整った唇の端が上にあがっている
こんな独特な雰囲気をもっている人にあっていたなら、忘れないはず…






でも…






「でも…わたしも懐かしい感じがする。
なぜかしら?なんだかだいぶ前に会ってる気がするの」



ターンをしながら、つぶやいてみた。



「すごいね、これも何かの縁なのかもね」


そういってすこし見つめあった
少しの沈黙のあと、曲は盛り上がりを見せていた。






「…いっ」




ターンをした後、足に痛みがはしった



「どうしたの?」



ロミオが心配そうに見つめてくる。



「ううん。なんでもないわ」




…そう強がってみたけど、歩く度に足からだんだん痛みが伝わってくる
普段ならこんな高いヒールなんて履かない。


ティボルトからの贈り物が嬉しかったから、何も考えてなかった



こんな序盤から靴ズレするなんて…






急に冷たい風が前髪をゆらした。
上を見ると星が輝いていた

「えっ」

いつのまにかバルコニーにでていた。



「ほら、足出して」
驚きながら、イスに座った。


「血がでてる」
そう言うと、胸ポケットからハンカチをだして、止血をしてくれた



こんなにもスマートに進むなんて…
すこしびっくりしてしまう

涼しい顔でこなす彼を見て、それほど慣れてるんだと思った。



すこし…羨ましいとおもう
わたしは、ただリードされてただけ。
息が合っていたのも…
ただ彼が慣れてただけ。




「大丈夫?」

すこし心配そうに言う彼は、
いままでどれだけの人を操ってきたんだろう


「…うん、大丈夫。

もう心配しないで」



あつくなってる顔に夜風がかかる。
急に心にストッパーがかかった気がする



…この人とは、仲良くなっちゃいけない。
って思った。





「もうすぐ2曲目が始まるわ
彼女のところに戻ってあげて」



明るい声をだして、彼を送りだそうとした。



「そうだね。
そろそろ行こうかな。」


「またどこかで会えたら…」



後ろからパートナー達を探す騒がしい音が聞こえる。


「うん。またどこかで。」


そういってロミオは、後ろのドアに向って歩き出した。