『華蝶』
 

ある一人の少女の通り名。


無駄のない動きで、相手に隙も与えさせない。


そして、見る人を魅力する。


そう、まるで華やかに舞う蝶のように。


そんな華蝶は、一年前に突如として消えた。


何の前触れもなく、もとから存在しなかったかのように消えていったのだ。


当時、少女はまだ中学三年生だったそうだ。


いつも、グレーのパーカーを着ていて
、深くフードを被っている。


そのため、口元しか見えないのだ。


真っ赤な口紅をつけ、妖艶に微笑む。


そして必ず、


『ユウ…ごめんなさい…』


そう、呟いてからケンカを始める。


ケンカが終わると一変し、真っ赤な口紅をつけた口は、妖艶な笑みから連想させる大人の雰囲気から、ただの幼い少女に戻る。


口をキュッと横に結び、まるで泣くのを我慢しているような口元。