美術室の中はほとんど何もなく、隠れるには向いてなかった。

次に私達は「H」の真ん中の線にあたる部分を歩いて、反対側に行った。途中、理科室があった。
骸骨が不気味に立っていた。

隠れられそうなところはあるけど、出来れば入りたくないな…。

理科室に入ろうとしたが、理科室もしまっていた。

先を進むと、階段があり、そこをこえると、一年生の教室があった。
教室はやっぱり、隠れられそうなところはなかった。

でも、手がかりなどを探すために中に入ってみた。
1年4組の教室は開いていて、鍵は教室の中にあった。
結構ボロボロになっている。

私が鍵を少しいじっていたら、何か紙らしきものが落ちてきた。

そこには、小さい子が書いたであろう文字が書かれてあった。


『助けて。「鬼」が迫っているよ。死んじゃう。帰りたい。』


たぶん、【ひとりかくれんぼ】に関係している人が書いたのだろう。
もしかすると、「秋穂ちゃん」の可能性もある。
とりあえず、持っておくことにした。


私が鍵を見ているうちに、紫音が黒板を見て、何かに気づいたらしい。
と言うか、気づかなかったらおかしい。

黒板に、血の手形があった。
そして、震えている文字で、「秋穂ちゃん やめて」と書かれていた。
さっき鍵の中にあった文字と似ているから、同じ人が書いたと思う。

でも、「秋穂ちゃん」って、自分で自分にやめてと言ってるなんて不思議だ。
もしかして、二重人格とか…?
そんなわけないか。


私達は次の教室に行ったが、鍵がしまっていた。
その隣も、全ての教室がしまっていた。

やっぱり、手がかりなんて簡単にはみつかるわけないよね…。

「そろそろ皆のところに戻らないとヤバイぜ!」
祐希くんの言葉で、皆はケータイの時計を見た。
もう11時50分になっていた。

たしか、清水寺から出るのが12時ちょうどだったはず。なら、速く戻らないと、私達がいなくなった事がバレてしまう。

「さあ、戻ろうか。」
祐希くんがそう言うと、皆頷いた。

そして、私達はまたタクシーに乗って清水寺に戻った。
まだS高校の皆は中でバラバラに観光していた。私達はそこにこそっと入っていった。

何とかバレないで戻って来れたようだ。

「はい、S高校の生徒は集まってください。」
いいタイミングで、集合がかかった。
人数もピッタリで、何の疑いもかけられなかった。

そのままバスに乗って、近くの食堂に向かって出発した。