ひとりかくれんぼ

菜子が襲って来たのだ。
また、首を絞めてきた。


今度は助けてくれる人はいない。

私は菜子の手をつかんで、力を和らげようとした。

でも、本当に菜子かと思うほど、とても力が強くて、和らげることもできなかった。

そうしている間にも、どんどん力が強くなってきている。

「や、めて…」

声もとても小さくしか出せない。助けも呼べないのだ。

すると、菜子の顔は笑っているのに、涙か流れていることに気づいた。

きっと、あの涙は、本物の菜子が流している涙だ。

まだ、菜子の自我は残っている!


すると、とても強かった力が弱まってきた。


そして、私は渾身の力で菜子の手を引き剥がした。


「っはあ。」

あと少しで死んでしまうところだった。

だけど、菜子の攻撃はまだ終わっていなかった。

今度は殴ってきたのだ。もう、菜子の自我は消えていた。
完全に殺すのを楽しんでいる。


ずっと殴られ、私が動けなくなっていると、菜子が馬乗りになった。

そして、どこから出したのか、ハサミを振りかざした。

もう、避けようがない。

私が死を覚悟したときだった。



バタン!


「秋穂!」

祐希くんが戻って来た。
すんでのところで菜子を取り押さえた。

私は、安堵からか、気絶してしまった。