でも、声も聞こえないし、足音も聞こえない。

「まだ、近くにはいない…。」


私は少しだけ安心した。
でも、すぐに気を引き締めた。


いつ来るかわからない。油断は禁物だ。


今のうちにどこに次隠れるか考えておかなきゃ…


私はどこに隠れられそうか考えた。

でも、やっぱり3階にはなさそうだった。



2階に行くしかない。
でも、2階にいってもしも女の子と鉢合わせたら…


鉢合わせにならなくても、隠れる場所がなかったら…



そう考えると、やっぱり動く気にはなれなかった。


そうしているうちに女の子の声が聞こえてきてしまった。


「どこにいるのー?出てきてよぉ〜。」


さっきより悲しそうに言ってきた。
でも、同情なんてしないんだから!



お願い、来ないで…!



私は心の中で強く願った。
ここに来たら見つかるのは時間の問題だ。



「どこ〜?お願い、出てきて…。」


声が大きくなってきている。
つまり、ここに近づいてきているということだ。



ああ…来ないでぇ…



私が強く思ったからか、女の子の声は遠ざかっていった。



逃げるなら今だ!



私は意を決してトイレの外に出た。
女の子の姿はなく、大丈夫だった。



私は2階へと向かった。
急がないと…!



トイレを出て右へ行くと、音楽室と、家庭科室があった。



そして、左へ行くと、プールへつながるドアがあった。
さらに先へ進むと2年生の教室があった。


置かれている道具などを見る限り、ここは中学校のようだった。


私は2年生の教室があるところに階段があるのを見つけた。
私は2階へと向かった。



階段を踏み外さないように慎重になりながら、階段を駆け下りた。




階段は音がよく響き、『鬼』に見つからないか心配だった。


階段を下りてすぐ目の前には放送室があった。
だけど、中には放送していたはずの菜子の姿はなかった。


あれ…?
何で…?菜子はいないの…?じゃあ、あの放送をしていたのは誰?



私が放送室の前で止まっていると、女の子の声が階段から聞こえてきた。



ヤバイ!


私は走って、テキトーに道を進んだ。
すると、図書室が目に入った。

もう、あそこに隠れるしかない。


私は図書室に駆け込んだ。



図書室は本棚と机くらいしかなくて、隠れる場所なんてなかった。



だけど、女の子の声は近づいてきていた。もう、ここで隠れるしかない。


私は図書室中を走り回った。
だけど、やっぱりどこにも隠れる場所はない。



そんな最悪なタイミングで『鬼』が来てしまった。



私は目の前にあった机の下に隠れた。



「そこにいるのー?」


女の子の声は楽しそうだった。
きっと、私の居場所をもうわかっているのだろう。



女の子はゆっくりと私の前でしゃがみ、女の子の顔が見えそうになった時だった。


私は最後の悪あがきとばかりに四つん這いのままで机の下を動き回った。


たぶん、あの女の子の目に私が写り、「みーつけた」と言わない限りは大丈夫なはず。



私は長い机の下ではじからはじへ向かった。


ところが、先には女の子の足があった。
そして、しゃがんで待っていた。



「きゃ…!」



女の子はニヤリと笑い、口を開いた。


「みーつけ…」


「これで『かくれんぼ』を終わります。」


また菜子の放送で女の子の言葉が遮られた。


また助かったのだ。


そして、さっきまでいたはずの女の子は消えた。


私は安心したからか、そこで眠ってしまった。