私はいきなり名字で呼ばれてびっくりした。

警察には名前を言っていないはずだけど…。

「ああ、ごめんね。あの後、先生方に名前を聞いたんだよ。君、秋穂ちゃんって言うんだね。」

「はい。もしかすると、今度は私が行方不明になると思います。でも、探さないでください。あ、それより、また一人犠牲者が…」

「それは誰だい?!」

「黒木 紫音です。たった今、亡くなりました。」

私はそう言うと、頑張ってこらえていた涙がいっきに流れ出した。

「もう、ともっ…だちを…なくしたく…なかった、のに…。」

「大丈夫。落ち着いて。今、どこにいるのかな?」
「タクシーに…乗って、山田春子さんの…家に、向かって、います…」

「わかった。私もそこへ行くから待っていなさい。」
「はい。」


そう言って、電話を切った。

「うわあああぁぁん!紫音ー!起きてよぉ!」

私は電話を切っ瞬間、思いっきり泣いた。

何度も紫音の名前を呼んだ。でも、返事なんてしてくれるはずもなかった。

そうやって、私が嘆いている間に、春子さんの家に着いた。

私達は何もしゃべらず、どんよりとした気分で降りた。紫音の死体は、屋根の下に座らせた。


「ありがとうございました…。」

でも、運転手さんにはお礼を言った。

そして、春子さんの家に行こうとしたとき、パトカーが来た。

「大丈夫かい?紫音さんは?」

私達は無言で目線だけで紫音の位置を指した。

「パトカーで死体を運んで行くから、君達は行きなさい。」
「はい。」

私達は、春子さんの家の玄関のチャイムを鳴らした。