「どこにいるのー?」


さっきの女の子の声だ。


たぶん、この子が『鬼』なのだろう。


「出てきてよー。」


なんだか徐々に声が近づいてきているような…



トントントン


足音まで聞こえてきた。
明らかに私がいる場所に向かっている。


キィィ…



隣の部屋のドアが開く音だ。
逃げるなら今しかないはず。でも、体が恐怖で固まってしまっている。


すると、隣の部屋から物が倒されているような音が聞こえてきた。


その振動がこっちにも伝わってくる。



「いない…。どこにいるのー?」


女の子の声が少しだけ怖くなっているのは気のせいだろうか…?



バン!


勢いよく教材庫のドアが開く音がした。



…ヤバイ、この部屋にいる…。お願い、そのままどっかに行って…



ドサッ!
ガチャン!



色んなものを落としたり蹴飛ばしたりしながら歩いているのだろう。


でも、徐々に私の隠れているダンボールに、近づいてきている。


…っもう、ダメだ…。


私はもう、恐怖で押しつぶされそうになっていた。


そのとき、私の入っているダンボールが揺れた。詳しく言えば、蹴飛ばされた。



「っ!」


蹴飛ばされた衝撃でいろいろなところに体をぶつけてしまった。



今ので明らかにこのダンボールに入っているとわかってしまっただろう。


「ここかなー?」


女の子の声がすぐ側で聞こえてきた。



そして、ダンボールのふたに女の子が手をかけたときだった。


私はあることを思いついた。


ただ隠れるだけじゃなくて、一度女の子に攻撃をして、逃げることは可能なのか。


試してみる価値はあると思った。