すると、また電話越しにシャッター音が聞こえた。

「神谷くん、またカメラで撮ってるの?」
「うん…。たぶん、これって、今まで【ひとりかくれんぼ】して、死んじゃった人じゃないか?」

「私もそう思った!」

と言うことは、見つかってしまったら、私もこの中に…

いや、そんなことは考えないでおこう。

「残り1分となりました。」

その放送で、私はどこに隠れるか、慌てて考えた。


私は、走って音楽室の方に向かった。

2階に降りて探すより、3階で他に隠れる所を探す方がいいと思ったから。

すると、さっきは気づかなかったけど、音楽室前に、使われていない棚があった。

扉が半開きになっていた。なんとか私だけなら入れそうだった。

私が中に入ると同時に放送が流れた。
「かくれんぼを再開します。」

その言葉を待っていたかの様に、『鬼』の声が聞こえてきた。

「どこにいるの〜?」

近くにいる。今はまだ出られない。

しばらくじっとしていると、足音も声も遠ざかって行った。

でも、階段を下りる音がしなかったと言うことは、2階には行ってない。

まだ、3階にいるということだ。

私はさらにしばらく待った。そして、完全に音が聞こえなくなったのを確認して、私は棚から出た。


たぶん、今、『鬼』は2年生の教室の所にいるだろう。

私は、2年生の教室はまだ全部調べていないけど、2階を調べることにした。

階段を下りると、放送室がある。
中には、菜子がいた。

すると、また菜子が、悲しそうな目でこっちを見てきた。

私は菜子がかわいそうになって来た。私は放送室のドアを開けようとした。
だけど、鍵がしまっていて、開けられなかった。

すると、放送室の中から、声が小さく聞こえてきた。

「助けて…。ここから、出して…。」

私はもう一度ドアを開けようとした。でも、開かなかった。

私は、何も出来なかった。私には助けられない。私があの寝言に応えなかったら、こんなことにはならなかったのに。私のせいなのに、何も出来ない私が悔しかった。


「えっ?菜子…?」

神谷くんが菜子のことに気づいたようだ。私はケータイを菜子の方に向けた。
こうすれば、皆が見えやすいと思って。


「菜子ー!大丈夫?!絶対に助けるからね!!」

美希が大きな声で言った。ちょっと、見つかりそうで怖かったけど…。