「どこにいるの〜?」

私は自分でも気づかないうちに息を止めていた。

なんだか、息を吸う音でも気づかれそうなほどしんとしていたから、息を止めていたのだろう。


トン トン トン

徐々に足音が大きくなっている。近づいて来ている証拠だ。

私は息を止めて、さらに動きも全て止めた。
皆も電話越しで同じ様に静かにしてくれている。

でも、もし今、先生達の見回りが、皆のいる部屋に来たとしたら…?

先生達は私の今の状況を知らないから、遠慮なく大きな音をたてるはず。

そうすれば、私は確実に見つかる。
でも、今はまだ見回りにくる様子はない。私はこのかくれんぼに集中してて大丈夫だろう。


でも、『鬼』が行ったら、皆に言わなければならない。

そう考えている間に、『鬼』は家庭科室の隣の音楽室に入っていったみたいだたった。
ドアの音から、家庭科室ではないし、でも音は近かったので、たぶん、音楽室だろう。


そのことを確信に変えるように、ピアノの音が響いている。
それも、耳を塞ぎたくなる様なめちゃくちゃな音で。


その音で、私は少し体を動かす事が出来た。ため息もついた。

でも、そのピアノの音はすぐに止まった。
そして、今度は音楽室にある机を蹴飛ばしたり、倒したりする音が聞こえ始めた。

何だか昨日の教材庫の時の様だ。
そういえば、休憩時間はまだなのだろうか。

早く気を楽にしたい。ずっと緊張して、疲れてきている。

すると、机が倒れる音が止んだ。そして、足音が聞こえて来た。

トン トン トン

今度は家庭科室に向かっている。絶対にこっちにくるだろう。

どうか、ここでやり過ごせますように…

そして、ついに『鬼』が入ってきた。ドアの開く音が確実に家庭科室だとわかった。