-----
「じゃあ、今日は本当にありがとうございました」
「ありがとうございましたっ」
俺は大きなキャンバスを両腕に抱え、葵と一緒に礼次郎さんに一礼した。
「こちらこそ、今日はとても楽しかったよ。それじゃあ日向くん、個展は来週だから、それまで根気よく頼むよ」
「はいっ!」
礼次郎さんに見送られて、俺たちは礼次郎さんのアトリエを後にした。
あたりは夕焼けで鮮やかなオレンジ色に染め上げられていて、俺たちの影は細長くのび、葵の髪が緩やかな風に乗ってなびいた。
来た時とは違う道を歩いてみたいという葵に合わせて、適当な路地を選びながら駅方面に歩く。俺たちの住む場所よりもずっと、懐かしい匂いのする町並みは、俺をほっとさせた。

