あの子に気持ちを伝えてしまってから、3日が経った。
もう帰ってきたんだろうか?
まだ旅行に行ってるのか?
この3日気になって仕方がない。
僕はなんて自分勝手なんだろうと思った。
あの子への気持ちがはっきりわかった今、まどかと一緒にいることは筋違いだ。
でも今もまだ一緒にいる。
この先別れることも考えていない。
あの子の変わりかと思われても仕方がないけど、まどかとのこの関係も大事だと思っている。
井伊垣歩が好きな事は自覚した。
正直あの子と深い関係になりたい。
抱きしめてキスをして、愛し合いたい。
あの男の位置に僕が入れ替わりたい。
今はあの男がとなりにいるけど、いつか自分が…と思ってしまう。
この3日考えてしまう…あの子はあの男に抱かれてるのかと…。
それを振り払いたくて僕はまどかと抱き合った。
あの子が見えなくなるまで見ていた後バイトに行って家に帰ってから、無我夢中でまどかを愛した。
次の日僕たちは一日中裸で過ごした。
この3日間、何度まどかを愛したか自分でもわからない。
なのに頭にあの男と楽しそうに笑い合う、あの子の笑顔がこびりついて離れない。
最低な行為とわかっていても、あの子を想いながら、まどかと抱き合った。
「郁…どうしたの?なんかあったの?」
愛し合ってる時にまどか聞いてきたけど『愛してる』と伝えたら、「私も…」と微笑んだ。
罪悪感が湧いてきたけれど目の前の快楽が勝った。

『まどか…僕たち結婚しないか?』
「えっ?」
コーヒーを淹れてくれてるまどかに僕は何気なく言った。
「本気で言ってる?」
『あぁ僕は本気だよ。』
まどかの瞳が潤んでくる。
「でも…でも私たちまだ学生だし…まだ数ヶ月しか付き合ってないし…」
『嫌なの?』
「そんな…嬉しいよぉ」
とたんに涙が溢れて出す。
子供の様な泣き方に愛おしくなる。
あの子の事は好きだけど、どうする事も出来ない。
かといっても、まどかで妥協したとかではない。
まどかとこのまま一緒にいれたらいいなという思いには嘘はないし、結婚したいという思いも嘘はない。
きっと幸せになると思っている。
幸せにしたいとも思う。
『じゃこうしよう…大学卒業したら、もう一度考えて。』
「…わかった。」
『僕の気持ちは変わらないから。』
「うん…ありがとう。」
この世で僕だけじゃないはずだ。
他の女を好きでも結婚する奴なんてごまんといるはずだ。
それに僕はまどかを大事に思ってるのは事実だから…だから結婚したいと思ったのは自然な事だ。
それにあの子を想っていても、どうにもならない。
まどかと一緒にいれば僕は幸せになれる。
それにいつかは忘れる時がくるかもしれない。
今こんなに苦しい思いも、あの子を想って気が狂いそうなこの気持ちも忘れる時がくる。
まどかに言った言葉は嘘じゃない。
大学卒業したら結婚しよう。

この頃の僕は漠然と考えていたのかもしれない。
この先井伊垣歩との関係は自然と薄れなくなるものだと思っていた。
まどかと結婚して、いつか子供が出来て一緒に歳を重ねていくものだと…。
でもそれは神の手で呆気なく潰される未来だった。
僕の未来は想像を遥か越え、井伊垣歩と深く関わっていく。