空港向かう電車の中で落ち着かせるのに必死だった。
頭の中はいっぱいになり今にも爆発してしまいそうだった。
【君が好きなんだ。】
また手のひらを気にするようになってしまった。
あの日障がい者だからと手のひらに書かれ、ずっと手のひらに書かれた感触がきになった。
でも、あの時と違う。
手のひらが熱くドキドキしてる。
八雲さんが私を好き…?
まどかさんは?別れたの?
ううん、何考えてるの!!
私は虎ちゃんが好きじゃない!
今から虎ちゃんと旅行なのに…。
「歩…?どうした?」
「えっ?な…何?」
急に声をかけられ、びっくりした。
「いや、だから向こう着いたら一番に国際通り行こうなって…」
急じゃない。虎ちゃんはずっと話しかけてたんだ。
私が聞いてなかった。
「あ…うん。行こうね。」
虎ちゃんに彼が片想いだった人って知られたくない。
私にとって八雲さんは過去の人。
今大事な人は虎ちゃんなんだ。
「虎ちゃん…」
「ん?どうした?あぁ次で降りるよ。」
虎ちゃんは先々を考えてくれる。
「ううん違うの…私虎ちゃんが好きって言いたくなって…」
「急になんだよ…」
恥ずかしそうな声。
やっぱり愛おしくなる。
「ごめん…でも言いたくて。虎ちゃんは私のこと好き?」
「そんな事言わなくてもわかるだろ。」
いつも言ってくれるのに電車の中では言ってくれないんだと思った。
少し膨れてみた。
虎ちゃんの顔が近付いた。
耳元で好きだよと言ってくれた。
言われた左耳が熱くなる。
この想いは虎ちゃんじゃなきゃ感じない。
八雲さんは私の好きな人じゃない。
駅に着いて空港向かう。
虎ちゃんは私を待たせ搭乗手続きを済ませてきてくれた。
「飛行機まで一時間弱あるから、どっかお茶でもしよっか?」
「うん。」
私たちはカフェでお茶をした。
たわいもない話をした。
ホテル楽しみだねとか、海楽しみだねとか、俺はあれが食べたいとか、何処行きたいとか…。
「歩は何が一番楽しみ?」
ずっと子供の様に無邪気に話してた虎ちゃんが聞いてきた。
「う〜んっとね…」
考えてみたけど…どれも楽しみで決められない。
「虎ちゃんと一緒だから、どれも楽しみ!」
「…そっか。俺も歩と一緒だから、何処でも楽しみでしょうがないよ。」
そう言って頭をクシャとしてきた。
「嘘だ!!」
「なんで、本当だよ!?」
「だって一番の楽しみは…」
言いかけてやめた。
「やっぱりいいや。なんでもない!」
「なんだよ。気になるだろ。」
「あっ時間大丈夫?」
「話変えるなよ。…じゃそろそろ行くか!?」
「うんっ!」
そっと手を添えて私を支えてくれた。
「歩と過ごす夜が一番楽しみにしてるよ。」
また耳元で言われた。
やっぱり私が言おうとしてた事わかってたんだ。
「もうっ!!」
恥ずかしくてたまらなかった。
でも、嬉しくてたまらない。
不安だらけだけど、この旅行の為に新しい下着も理沙に付き合ってもらって買ってある。
しかも三組も買ってしまった…。
自分ではわからないけど、触った感触ではかなり可愛いと思った。
リボンとフリルがついていた。
色は理沙が選んでくれた。
薄いピンクの一つと、白のが二つ。
組み合わせを間違えないように、ペアごとに袋にわけた。
この日の為に貯金を下ろして、いっぱい買い物した。
新しい服もボディクリームも初めて買った。
香水も初めて買った。
理沙に選んでもらった、柑橘系の爽やかで少し甘い香りだった。
これ歩にぴったりだよ!と言われて少し大人になれた気がした。
「歩…だいたい2時間ぐらいらしいから。」
「うん、わかった。」
今日から4泊5日虎ちゃんと過ごす時間を私は大切に愛を育むんだ。
虎ちゃんの愛をいっぱい感じる旅行になる。
虎ちゃんへの愛を伝える旅行になる。
私はこの旅行で…虎ちゃんの腕の中で大人になるんだ!!