あれから帰り道、虎ちゃんに何度電話しても出ない。
メールもしたけど返信もない。そのメールを見たかどうかもわからない。
家にいるかどうかわからないけど虎ちゃんに会いたい。
家の前で少し息を整えた。
急いで来たから少し息が上がってる。
インターホンを押した。
出てこない。
虎ちゃんはいる。
扉の向こう側に虎ちゃんの気配がするから。
もう一度押してみる。
反応がない。
避けられてる?この前急に帰ってしまったのとなんか関係してるの?
なんで出てきてくれないの?
泣きそうになる。
踵を返し玄関から離れた。
家に帰ろう…。
涙が流れる。
私は誰からも愛されないのかなと考えてしまう。
こんな目だから…子供だから…。
きっと虎ちゃんもなにかしら私が嫌になってしまったんだと思った。
私は虎ちゃんの優しさに、いつも甘えてた。
八雲さんも、まどかさんも優しい人。
でも、それは私が見えない人間だから。
虎ちゃんが優しいのも私が見えない人間だから。
優しくしてくれてたのは障がい者だから…。
「歩!!!」
後ろから大きな声で虎ちゃんが私を呼ぶ声がした。
「虎ちゃ〜ん!!」
虎ちゃんの声で呼ばれ、たまらず泣き出した。
目の見えない人間だからって思われててもいい。
虎ちゃんにだけは拒絶されたくない。
虎ちゃんが走ってきた。
靴の音がしない。
きっと裸足できてくれた。
抱きしめられて虎ちゃんの腕の中で泣きじゃくった。
何があったかと聞かれたけれど、もうどうでもよくなっていた。
今はただ虎ちゃんが出てきてくれたことが嬉しかった。
でもこの気持ちを、どう伝えればいいかがわからず、私はただ泣くしかなかった。
虎ちゃんの家に入ってソファに座った。
久しぶりの虎ちゃんの家。
あの頃と匂いが違う。
おばちゃんの匂いがないからか、男の人だけの匂いになった。
おばちゃんがいてたときは花の匂いがいっぱいだった。
虎ちゃんはホットミルクを入れてくれた。
甘くて優しい匂い。
牛乳の温かさが心まで温かくしてくれる。
虎ちゃんは離れて座った。
やっぱり避けられてるんだと思った。
私が落ち着くのを待って虎ちゃんは話しかけてきた。
少し離れた所から聞こえる声は、凄く淋しく感じた。
何があったかと聞かれたけれど、答えず質問をした。
虎ちゃんは好きな人いるのか初めて気になった。
ご近所さんなのに一度も彼女らしい人をみたことがなかった。
虎ちゃんはいると言った。
明るくて可愛い子だと…。
凄く複雑な気持ち。
自分でもなんでそんな想いになったのかが、わからない。
虎ちゃんは片想いだと…私と一緒だと思った。
虎ちゃんにまた何があったかと聞かれた。
私は数時間前のことを話した。
虎ちゃんは辛かったなと言った。
確かに辛かった。
でも今はさほど辛いと感じてない。
虎ちゃんのそばにいるせいか、さっきの辛さは消えている。
隣に座って欲しくてソファを叩いた。
虎ちゃんの溜息が聞こえた。
私…迷惑をかけてるのかもしれない。
それでも隣に来て欲しい。
虎ちゃんが隣に座った。
隣を触ると虎ちゃんの足に触れた。
そのまま私は虎ちゃんの腕の中に入った。
この場所はとても落ち着く。
背中に腕を回した。
虎ちゃんの心臓の音が聞こえる。
…少し早い気がする。
離れてと言われた。
心がズキンとした。
体勢を変えて後ろから抱きしめてもらう形に座る。
恋人みたいだと思った。
虎ちゃんの腕を抱きしめた。
八雲さんに対しての想いとは違う想いがこみ上げてくる。
私が抱きしめてる腕が離れようと力が入ってるのがわかる。
なんで?そんなに私が嫌い?
この前から虎ちゃん…変だよ。
離すもんかと一層腕を掴んだ。
瞬間、虎ちゃんが私の胸を触った。
いや、《揉まれた》のほうが正しい表現だと思う。
私は虎ちゃんから離れた。
なんで虎ちゃんがそんなことしたのかがわからない。
今さっき片想いの子がいるって言ってたのに。
明るくて可愛い子って…。
自分の呼吸と虎ちゃんの呼吸の音が早い。
二人の呼吸音が重なる。
その重なりを虎ちゃんが打ち消した。
「歩…さっき言った好きな人は君なんだ。」
何を言われてるのかが頭の中で繋がらない。
虎ちゃんはずっと好きだと言った。
初めて会った日からずっと…。
そんなに私を想ってたの?
明るくて可愛い子が私?
なのに私の背中を押してくれてた…。
ソファの軋む音がした。
虎ちゃんが近付いてくる。
思わず体をビクッとさせてしまった。
「ごめん…怖がらせるつもりはなかったんだ。本当ごめん…」
そう言った声は震えてる。
虎ちゃんが怖いわけじゃない。
ただ初めての空気に戸惑ってる。
虎ちゃんが出す男の空気に…。
虎ちゃんが…泣いてる。
どうしよう…凄く愛おしい。
さっき、ついさっき八雲さんの彼女がいてることにショックだったのに…。
私、流されてるのかもしれない。
虎ちゃんに好きだと言われて流されてるだけかもしれない。
虎ちゃんの片想いの相手が私だったことに舞い上がってしまってるだけかもしれない。
それでもいい…今は八雲さんよりも目の前にいる虎ちゃんが愛おしい。
凄く凄く愛おしい。
私は虎ちゃんを抱きしめた。
さっき触られた胸に虎ちゃんを抱きしめる。
嫌じゃなかった。
虎ちゃんが体を伸ばして私は後ろにもたれる様に倒れた。
目の前に虎ちゃんの顔がある。
息がかかる距離に虎ちゃんの顔がある。
心臓がバクバクいってる。
全力疾走し時よりも、もっともっと早くドキドキしてる。
このままじゃドキドキが虎ちゃんに聞こえちゃう。
手を虎ちゃんの胸に当てた。
虎ちゃんも私と一緒だった。
あれ、待って…これってキスされる?
少し覚悟をした。
虎ちゃんにならいいと思った。
私の初めてのキスは虎ちゃんがいい。
でも虎ちゃんはズルいことはしなかった。
目の見えない私にちゃんとキスしたいと、していいかと聞いてきた。
「俺の物にしたい。」と…。
えっえっそれってエッチってこと?
展開早くない?
虎ちゃんは私を大事にするから八雲さんのことを忘れて欲しいと言った。
私の中で虎ちゃんを抱きしめた時から八雲さんのことは消えていて虎ちゃんのことしか想ってなかった。
私、虎ちゃんのそばにいたいよ。
うんと頷いた。
虎ちゃんは声で聞きたいと言った。
恥ずかしいけど答えた。
虎ちゃんは子供の様にはしゃいで喜んだ。
虎ちゃんがお母さんに報告しなきゃと言った。
慌てて止めた。
改めて報告なんて恥ずかしすぎる。
虎ちゃんはまた大切にするからと言った。
さっきまでの賑やかさがなくなる。
静けさの中で虎ちゃんが近付いた。
キュッと力が入る。
虎ちゃんは優しく私のおでこにキスをした。
そのまま二人でソファに座ってた。
なんだか嘘みたいな時間だった。
幼馴染みのご近所のお兄ちゃんは私の恋人になった。
私…虎ちゃんが好きだ。
流されてるかもしれないことはわかってる。
この好きが愛かどうかまだわからない。
けど、そばにいて欲しい。
ただ私がそばにいたいんだ。
突然携帯が音を出した。
この着信音はお母さんだ…。
電話に出るとお母さんが話し出す。
「歩?あんたまだ虎ちゃん家にいてるの?」
「うん、まだ虎ちゃん家。」
「まだ帰って来ないの?なんかあった?大丈夫なの?」
「うん、大丈夫…お母さん今日虎ちゃんとこ泊まっていい?」
私は虎ちゃんの物になるんだ。
虎ちゃんの想いを受け止めたい。
「そう…じゃ明日学校は?休むの?」
あっさり受け止められて少し戸惑う。
「ううん、朝一旦帰ってから学校行くから。」
「わかった。頑張んなさい。」
「ありがとう。じゃね。」
お母さんは気付いたのかもしれない。
お母さんも女の人なんだと思った。
私は振り返って虎ちゃんに泊まると言ったことを伝えた。
虎ちゃんの動揺が部屋いっぱいに広がった。
あっ私、虎ちゃん困らせた?
でもこの覚悟を受け止めてほしい。
虎ちゃんは泊まるってことがどうゆうことかわかってる?と、聞いてきた。
私は、わかってると答えた。
虎ちゃんは長い溜息を付いて、とりあえず晩御飯にしようと言った。
メールもしたけど返信もない。そのメールを見たかどうかもわからない。
家にいるかどうかわからないけど虎ちゃんに会いたい。
家の前で少し息を整えた。
急いで来たから少し息が上がってる。
インターホンを押した。
出てこない。
虎ちゃんはいる。
扉の向こう側に虎ちゃんの気配がするから。
もう一度押してみる。
反応がない。
避けられてる?この前急に帰ってしまったのとなんか関係してるの?
なんで出てきてくれないの?
泣きそうになる。
踵を返し玄関から離れた。
家に帰ろう…。
涙が流れる。
私は誰からも愛されないのかなと考えてしまう。
こんな目だから…子供だから…。
きっと虎ちゃんもなにかしら私が嫌になってしまったんだと思った。
私は虎ちゃんの優しさに、いつも甘えてた。
八雲さんも、まどかさんも優しい人。
でも、それは私が見えない人間だから。
虎ちゃんが優しいのも私が見えない人間だから。
優しくしてくれてたのは障がい者だから…。
「歩!!!」
後ろから大きな声で虎ちゃんが私を呼ぶ声がした。
「虎ちゃ〜ん!!」
虎ちゃんの声で呼ばれ、たまらず泣き出した。
目の見えない人間だからって思われててもいい。
虎ちゃんにだけは拒絶されたくない。
虎ちゃんが走ってきた。
靴の音がしない。
きっと裸足できてくれた。
抱きしめられて虎ちゃんの腕の中で泣きじゃくった。
何があったかと聞かれたけれど、もうどうでもよくなっていた。
今はただ虎ちゃんが出てきてくれたことが嬉しかった。
でもこの気持ちを、どう伝えればいいかがわからず、私はただ泣くしかなかった。
虎ちゃんの家に入ってソファに座った。
久しぶりの虎ちゃんの家。
あの頃と匂いが違う。
おばちゃんの匂いがないからか、男の人だけの匂いになった。
おばちゃんがいてたときは花の匂いがいっぱいだった。
虎ちゃんはホットミルクを入れてくれた。
甘くて優しい匂い。
牛乳の温かさが心まで温かくしてくれる。
虎ちゃんは離れて座った。
やっぱり避けられてるんだと思った。
私が落ち着くのを待って虎ちゃんは話しかけてきた。
少し離れた所から聞こえる声は、凄く淋しく感じた。
何があったかと聞かれたけれど、答えず質問をした。
虎ちゃんは好きな人いるのか初めて気になった。
ご近所さんなのに一度も彼女らしい人をみたことがなかった。
虎ちゃんはいると言った。
明るくて可愛い子だと…。
凄く複雑な気持ち。
自分でもなんでそんな想いになったのかが、わからない。
虎ちゃんは片想いだと…私と一緒だと思った。
虎ちゃんにまた何があったかと聞かれた。
私は数時間前のことを話した。
虎ちゃんは辛かったなと言った。
確かに辛かった。
でも今はさほど辛いと感じてない。
虎ちゃんのそばにいるせいか、さっきの辛さは消えている。
隣に座って欲しくてソファを叩いた。
虎ちゃんの溜息が聞こえた。
私…迷惑をかけてるのかもしれない。
それでも隣に来て欲しい。
虎ちゃんが隣に座った。
隣を触ると虎ちゃんの足に触れた。
そのまま私は虎ちゃんの腕の中に入った。
この場所はとても落ち着く。
背中に腕を回した。
虎ちゃんの心臓の音が聞こえる。
…少し早い気がする。
離れてと言われた。
心がズキンとした。
体勢を変えて後ろから抱きしめてもらう形に座る。
恋人みたいだと思った。
虎ちゃんの腕を抱きしめた。
八雲さんに対しての想いとは違う想いがこみ上げてくる。
私が抱きしめてる腕が離れようと力が入ってるのがわかる。
なんで?そんなに私が嫌い?
この前から虎ちゃん…変だよ。
離すもんかと一層腕を掴んだ。
瞬間、虎ちゃんが私の胸を触った。
いや、《揉まれた》のほうが正しい表現だと思う。
私は虎ちゃんから離れた。
なんで虎ちゃんがそんなことしたのかがわからない。
今さっき片想いの子がいるって言ってたのに。
明るくて可愛い子って…。
自分の呼吸と虎ちゃんの呼吸の音が早い。
二人の呼吸音が重なる。
その重なりを虎ちゃんが打ち消した。
「歩…さっき言った好きな人は君なんだ。」
何を言われてるのかが頭の中で繋がらない。
虎ちゃんはずっと好きだと言った。
初めて会った日からずっと…。
そんなに私を想ってたの?
明るくて可愛い子が私?
なのに私の背中を押してくれてた…。
ソファの軋む音がした。
虎ちゃんが近付いてくる。
思わず体をビクッとさせてしまった。
「ごめん…怖がらせるつもりはなかったんだ。本当ごめん…」
そう言った声は震えてる。
虎ちゃんが怖いわけじゃない。
ただ初めての空気に戸惑ってる。
虎ちゃんが出す男の空気に…。
虎ちゃんが…泣いてる。
どうしよう…凄く愛おしい。
さっき、ついさっき八雲さんの彼女がいてることにショックだったのに…。
私、流されてるのかもしれない。
虎ちゃんに好きだと言われて流されてるだけかもしれない。
虎ちゃんの片想いの相手が私だったことに舞い上がってしまってるだけかもしれない。
それでもいい…今は八雲さんよりも目の前にいる虎ちゃんが愛おしい。
凄く凄く愛おしい。
私は虎ちゃんを抱きしめた。
さっき触られた胸に虎ちゃんを抱きしめる。
嫌じゃなかった。
虎ちゃんが体を伸ばして私は後ろにもたれる様に倒れた。
目の前に虎ちゃんの顔がある。
息がかかる距離に虎ちゃんの顔がある。
心臓がバクバクいってる。
全力疾走し時よりも、もっともっと早くドキドキしてる。
このままじゃドキドキが虎ちゃんに聞こえちゃう。
手を虎ちゃんの胸に当てた。
虎ちゃんも私と一緒だった。
あれ、待って…これってキスされる?
少し覚悟をした。
虎ちゃんにならいいと思った。
私の初めてのキスは虎ちゃんがいい。
でも虎ちゃんはズルいことはしなかった。
目の見えない私にちゃんとキスしたいと、していいかと聞いてきた。
「俺の物にしたい。」と…。
えっえっそれってエッチってこと?
展開早くない?
虎ちゃんは私を大事にするから八雲さんのことを忘れて欲しいと言った。
私の中で虎ちゃんを抱きしめた時から八雲さんのことは消えていて虎ちゃんのことしか想ってなかった。
私、虎ちゃんのそばにいたいよ。
うんと頷いた。
虎ちゃんは声で聞きたいと言った。
恥ずかしいけど答えた。
虎ちゃんは子供の様にはしゃいで喜んだ。
虎ちゃんがお母さんに報告しなきゃと言った。
慌てて止めた。
改めて報告なんて恥ずかしすぎる。
虎ちゃんはまた大切にするからと言った。
さっきまでの賑やかさがなくなる。
静けさの中で虎ちゃんが近付いた。
キュッと力が入る。
虎ちゃんは優しく私のおでこにキスをした。
そのまま二人でソファに座ってた。
なんだか嘘みたいな時間だった。
幼馴染みのご近所のお兄ちゃんは私の恋人になった。
私…虎ちゃんが好きだ。
流されてるかもしれないことはわかってる。
この好きが愛かどうかまだわからない。
けど、そばにいて欲しい。
ただ私がそばにいたいんだ。
突然携帯が音を出した。
この着信音はお母さんだ…。
電話に出るとお母さんが話し出す。
「歩?あんたまだ虎ちゃん家にいてるの?」
「うん、まだ虎ちゃん家。」
「まだ帰って来ないの?なんかあった?大丈夫なの?」
「うん、大丈夫…お母さん今日虎ちゃんとこ泊まっていい?」
私は虎ちゃんの物になるんだ。
虎ちゃんの想いを受け止めたい。
「そう…じゃ明日学校は?休むの?」
あっさり受け止められて少し戸惑う。
「ううん、朝一旦帰ってから学校行くから。」
「わかった。頑張んなさい。」
「ありがとう。じゃね。」
お母さんは気付いたのかもしれない。
お母さんも女の人なんだと思った。
私は振り返って虎ちゃんに泊まると言ったことを伝えた。
虎ちゃんの動揺が部屋いっぱいに広がった。
あっ私、虎ちゃん困らせた?
でもこの覚悟を受け止めてほしい。
虎ちゃんは泊まるってことがどうゆうことかわかってる?と、聞いてきた。
私は、わかってると答えた。
虎ちゃんは長い溜息を付いて、とりあえず晩御飯にしようと言った。


