憎たらしいほど君が好き

「あっ、そろそろあたしたち出るね!」

「…うん」

「早くしろよー?」


ぽん、と頭に真人の手が置かれた。


顔を上げると、もう理彩と真人が笑いながら出て行く所だった。


そう、《あたしたち》って言い方が引っかかるんだ。

小さなことにクヨクヨして、卑屈で。

自己嫌悪って正にこういうこと。


「今度は何を悩んでるわけ?」

夕陽がロッカーにもたれたまま横目で私を見る。


「何か、ね。前と変わらないよこれ」

「変わりたかった?」

「理彩と真人が先を行って。私と夕陽が追いかける、ってさ……彼氏彼女になろうと変わらない構図なんだよ」


理彩を真人が追いかけるとこなんて見たくない。

私を待っていてほしいのに。

我ながら面倒くさいよ私。

サバサバなんてしてない。

「甘いよ。霞は真人がそう簡単に変わるほどの奴だと思ってんの?仮にも真人は俺の親友なんだよ」

「知ってる」

「俺は真人のことをそんな小さな人間だと思ったことない」



鋭いけど正論だった。

何を不安になってるの?

確かに前に好きだったのは理彩だったけど、その気持ちが今は私に向いてるんじゃない。


「ありがと夕陽」


スッキリしたよ、と笑顔を向けると、夕陽も滅多に見せない笑顔をくれた。



今日もまた頑張れそうだ。