あえて凛冬が言わなかった一言を、
音にするなんて、バカだなぁ、私も。
凛冬がその単語を、
言わないことがイヤだった。
イヤだったけど、重いな。
口に出すと。
向き合うって、しんどい。
「………」
空気が頷いて、
自分の目的を見失いそうになる。
「秋季に出会ったのは、そんな時」
「え?」
突如呼ばれた名前にびっくりして
凛冬をみると、やさしい顔。
急に話が変わって、私は訳がわからない。
「兄貴達のことから逃げるように
バイトに夢中になってたらさ、
秋季が現れたんだ」
「…Roots」
「そ、」
凛冬のバイト先だったRootsは、
ライブハウスで。
好きなバンドのライブをみにいったときに、
スタッフとして凛冬がいた。
「たしかにあの時、
異様なくらい仕事に集中してたよね」
なのに、話しかけられると、
チャンネルを切り替えたみたいに人懐っこくて。
それが不思議で、気になって。
私から声を掛けたのをよく覚えてる。
「異様、だったよな」
ははっと笑いながらそう言う凛冬に
頷けずに返しを探す。
「それを救ってくれたのが秋季だった」



