…でも。 あの日、大切な人の痛みに 向き合えずに逃げたことを 繰り返したくはない。 ちゃんと向き合えばよかったと、 記憶と一緒に刻まれた後悔を 無駄にしたくなんかないから。 これからの私達に、物語はなかったとしても。 ちゃんと聞かなきゃ。 気持ちを強く、砂浜をつかんで。 私の呟きに頷いてから、 口を開く凛冬の言葉を待つ。 「…兄貴の、奥さん」 風が、言葉を海へと流す。