~弘人side~


俺の言った言葉の意味がわからずにきょとんとしている瑞花。


「俺たち、ぶつかったあの日より前に会ってるんだよ、入試の日に」


「…えっ!?」


そう、あの時は、消しゴムを家に忘れてしまってとても焦っていた。


ー入試の日ー


俺は席について筆箱を出した。


そしてその時、消しゴムがないことに気づいた。


が、担当の先生はまだ来ていなかった。


来たとしても、言いづらいし…。


笑われて終わりだよな。


どうしようかと悩んでいたその時。


「…もしかして、消しゴム忘れた?」


隣の席の女の子が俺に声をかけてくれた。


「あ、うん…」


「私、予備にもう一個持ってきてるから、そっち使っていいよ!」


その子は筆箱から消しゴムを取り出し渡してくれた。


「えっ!いや、いーよ!担当の先生に言うから」


申し訳なくて断ったが、


「え、でもみんなの前で言うのなんか嫌じゃない?」


と、俺が思っていたことと同じことを言った。


「あ…うん…」


つい正直にうなづいた俺。


「でしょ?はい、これ」


その子は消しゴムを俺の机の上にのせると、前を向いてしまった。


試験の後、お礼をしたいと思った俺は、その子に名前と連絡先を聞いた。


「河原瑞花だよ。私、LINEは高校生になってからじゃないとダメで、今はTwitterしかやってないから、それ教えるね」


俺はそのアカウントを教えてもらってその子と分かれた。