「兄貴とも中学のときに決別した。親父が突然『一緒に暮らそう』って帰ってきたんだ。

 でもおふくろは嫌がった。結局兄貴が親父について行って、俺はおふくろと残った」


「それって……」


「離婚だったらよっぽどよかったのにな。いまだにズルズル引きずってる」



 ふいに郁人くんが身を引いて、あるものを取り出す。

 そこにあったのは、一度だけ見たことがある蒼色の丸いもの。

 郁人くんが大事にしていたものだ。

 間近に見てみると、それはたまごの形をしていた。