マッハの速さで、密談に最適な資料室へ駆け込む。

 用心深く室内の最深部まで若葉くんを連れて来ると、早速話の口火を切った。



「なんで? どうして眼鏡かけてないの!?」


「あはは……昨日さ、ちょっとした事故で壊れちゃって」


「壊れた? じゃあなんで目が黒いの!?」


「雅宏さんにコンタクトをもらったんだ。眼鏡と同じ性能があるから、大丈夫だっていう太鼓判つき。似合わないかな?」


「いやっ、それは違う! 違うんだけどね!?」



 自称・地味男の若葉くんは、たぶん自分の価値をわかってない。

 眼鏡というある種の障害物を取り去った今の彼は、くっきりした目鼻立ちがあらわになっているというのに。
 

 ……これは大変なことになるぞ。


 私の危惧通り、この日、校内に黄色い嵐が吹きすさび始めた。