せきを切ったように紡ぎ出される言葉に、黙って耳を傾ける。

 どれも心に突き刺さるくらい痛かった。


 でも言葉以上に、郁人くんの辛そうな表情と、純粋過ぎる瞳が、いっそう胸を痛めさせた。



「……好きだから」


「……何?」


「人が、好きだから」



 栗色の瞳が見開かれたのも束の間で、



「……おめでたいヤツ」



 クシャッと栗毛を潰した郁人くんは、逃げるように薄暗い廊下の向こうへ消えて行った。