「――その汚ねぇ手で、誰に気安く触った?」



 突如として温度を下げた声音に、男が後ずさる。



「今宵は満月……俺は非常に機嫌が悪い。問答無用で食い殺す!!」



 言うなり、私を抱きかかえたまま竹刀を振るう。



 片手、しかも動きにくい体勢で踏み込みも甘いはず。


 なのに目にも留まらぬ速さで繰り出された一撃は、男をいとも簡単にフッ飛ばした。


 呻き声すら上げさせずに、だ。



「堀川を殴られなかった分が溜まっていたからな。半殺しでは生ぬるい」



 ポツリと恐ろしいことを呟き、私を離す。


 かと思えば。



「怪我がなくて本当によかった。心配したよ……」



 真正面から、ぎゅうっと抱き締められ、た……?