「僕は平気です。安心して使ってください。体力だけは無駄に余ってますから」


「……ありがとうございます」


「お気になさらず。さ、急ぎま、――っ!」


「聡士くん?」


「……僕たちをつけている人がいます」


「何ですって?」



 五感を研ぎ澄ませる。



 人の匂い。


 人数は……1人、2人……3人。


 足音が重い。男だ。



 見晴らしのいい通りで、建物の影に揺らめく人影を見つける。


 息を詰め、じっと目を凝らす。


 やがて――



「そっ……そんな睨まなくてもいいじゃないですかぁ!」



 向こうからビクビクした3人が……主に朝桐がやってきた。


 これが脱力せずにいられるだろうか。