ピリリリ、ピリリリ。


 八神医院を出てからしばらくもしないうちに、状況は一変する。



「もしもし、歩美ちゃん? こんな時間にどうしたんだい。……何、隼斗くんが!?

 ……わかった。とりあえず歩美ちゃんは大人しくしていてくれ。その間隼斗くんを頼む」



 途切れ途切れの会話でも、ただならぬ事態ということは簡単に見て取れる。


 八神さんは通話を切ると、深刻な面持ちで眉をひそめた。



「歩美ちゃんは、彩子さんの妹……郁人くんたちの叔母に当たる人です」


「その人が、何と?」


「ある理由から、彼女には隼斗くんのことを任せていたのですが、状況が思わしくない方向へ動いているようです。……聡士くん、」



 高校生のあなたにお願いすることではない、と、八神さんの表情が物語っていた。


 だから僕は、彼の迷いを断ち切るために言う。