「……今回の暴行事件、俺に関係があるような気がするんだ。周りの人たちはみんな何かしら関わってる。兄貴も、堀川も……タダ先生も」


「ねぇ郁人くん、明日、八神さんに話を聞きに行ってみない?」


「……何で」


「事情を聞ける人の中で一番大人だし、今は一番冷静に対処してくれると思うの」


「でも、先生は今回の件に関わるなって」


「言ってたんなら、なおさら行くべきよ。今日は郁人くんの命まで危険に晒されたの。黙ってていい話じゃないと思うわ」


「…………」



 私の言葉に、郁人くんは小さく頷いてくれた。




 
 ――このときの私たちは、何も知らなかった。


 本当に何も知らない、子供だったのだ――……