「あのね郁人くん、城ヶ崎のことなんだけど、やっぱり無実の罪を着せられてるみたい」


「兄貴が?」


「被害者の人に偶然話を聞いたんだけど、暴行するどころか、助けてくれたんだって」


「……そうか」



 一言だけ呟いて、郁人くんは静かに立ち上がった。



「郁人くん? どこに行くの?」


「……もう、帰る」


「堀川くんの治療が終わるの、待たなくてもいいの?」


「タダ先生が治療してるんだろ。だったらいにくいし。……とにかく、ここを出よう」



 私は若葉くんと顔を見合わせ、歩き出す郁人くんに続いた。


 押し黙った郁人くんだったけど、八神医院を出ると同時に口火を切る。