郁人くん? と呼ばれた気がした。


 夕陽を反射する正面のガラスに、穏やかな笑みをたたえたタダ先生が映っている。



「今日はどうしたの。さすがに風邪で来たわけじゃないだろう?」



 振り返るまでもなく、冗談めかした先生が歩いてきた。


 俺の隣。自動ドアが反応する、1歩手前。



「……ちょっと話があるんだけど」


「私に? 何だい?」


「親父と、話をした」



 言いたいこと、聞きたいことはたくさんある。


 頭の中がぐちゃぐちゃで、出てきたのは結局こんな話題。



「どうだった」


「将来的に、一緒に住めるようになるかもしれない」


「そう。……よかったね」



 ……違う。


 俺が言いたいのは、こんなことじゃない。