「スキルス胃がん」


「え……」


「スキルス胃がん。胃がんの中でも転移を起こしやすいため治療が難しく、きわめて進行の速い病気だ。今年初めの時点で、母さんは余命半年だった」


「知ってたのか?」


「これでもいっぱしの医者だからな。母さんは俺の病院には来なかったが、経過を聞いていれば何となく予想はつく。

 ……告知日を過ぎたからもしや、と思ったが、1か月しかもたなかったか……」



 ひそかに唇を噛み締めた。


 父は知っていた。なのに言わなかった。



 母が余命を宣告されていたと聞かされたのは、ついこの間だ。


 なぜこんなに大事なことを言わないのだろう。


 両親揃って、俺を子供扱いしている。