「ごめんなさい! 通してください!」



 何とか人波を抜け出し、街路樹の根元にもたれかかった郁人くんに駆け寄る。


 呼吸が浅い。

 上体を抱き起こし、額に手を当てたところであぜんとする。


 身体がすごく熱い。

 なのに顔が真っ白だ。



「郁人くん! 郁人くん!」



 返事がない。

 それが余計に焦燥を煽いだ。


 このまま目覚めないんじゃないか?


 嫌な考えが頭をよぎる……。




「――すみません、診せてください!」
 



 どこからか、聞き覚えのない男性の声が聞こえた。