ヨセフの持つ銀製の鍼は、化け物に対して高い殺傷力を持つ。

刺すどころか、化け物が触れるだけでも、その聖性により火傷を負わせる。

化け物にとっては鍼そのものが、形ある『猛毒』なのだ。

もしその身を貫かれれば、刺傷に加え、内部から聖性による肉体破壊が起きる。

まるで人間が毒蛇に咬まれ、患部を毒に蝕まれていくように。

この鍼を受けて、無事でいられる化け物はいない。

いない筈だった。

それなのに。

「っっ…」

ヨセフの鍼は、邪悪に全く効果を発揮しない。

いや、確かに邪悪の肉体を破壊できているのだ。

目に見えてダメージを与えている筈。

それなのに…。

邪悪の顔からは笑みが消えない。

余裕が消えない。