―― “ごめんなさい”
―― “好きな人がいます”
謝らないで、と笑った堤くんは。
どこまでも優しい人で。
どこまでも強い人で。
好きになれたらいいのに、と。
やっぱり今でも思う。
―― “そっか”
息を吐くように呟いた堤くん。
野球部の野太い声に被さるようにして、ソフト部の高い声が聞こえていた。
―― “俺が言いたかっただけだから”
気にしないで、と付け足すように言い、堤くんは肩にエナメルバッグを掛け直した。
机の影は、少しだけ伸びていた。
言えて良かった、と笑う堤くんに上手く言葉を返せず、ただただその姿を見上げていた。
潔さが眩しすぎた。


