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「あ、松村おかえり」
視線を上げると、今日も爽やかな笑顔を携えた堤くんがいた。
「た、だい……ま?」
「ははっ、疑問形」
いつもと変わらないその姿に安心してしまう自分。
甘やかされている、と思う。
「はい、ノート」
「あ、ありがとう」
笑みをひとつ零し、授業中だけ着用している眼鏡をして席に向き直る堤くんは、次の授業の予習をするみたいだ。
わたしは渡された二冊のノートを眺め、机に向かう堤くんの後ろ姿に視線を移した。
いつも通りほど、有り難いものはないのに。
申し訳なく思ってしまうのは、振る舞うほうの辛さが分かるから。


