「……あ、電話」
呟いて、ポケットから携帯を取り出し耳に当てる桐谷。
視界の端でそれを認識しながらスカートを叩くと、微かに高い声が桐谷の手の中から聞こえた。
「今日? いいよ、前と同じとこでいい? ……えー、家?」
ぽつりぽつり、吐き出される言葉は宙に舞って泡沫に消える。
飛行機雲みたいだ、と思いながらわたしは桐谷に背を向けた。
ギイ、青いドアを開ける。
バタン、こっちとあっちを隔てる。
その寸前に聞こえたのは、
「うん、……楽しみにしてる」
他の女の子に向けられた、甘い声だった。
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