どう返事をすればいいか分からず、視線を落とすと隣から悪戯な笑い声が聞こえた。

くすくすと、軽快な音色。

すべてを見透かされているような気がしてならない。


「目とか、合ったっけ」


白々しく呟くと、合ったよー、なんてわざとらしい声が返ってくる。


本当に、意地悪だな。



「ふーん、そうだったんだ」



“目が合っていたことくらい何でもない。”

“わたしは別に意識していない。”


自分にそう言い聞かせて、隣からの含みような笑みに興味のない素振りをする。

その下手くそな演技を掻き消すように、チャイムが鳴った。

ナイスタイミング、と桐谷から逃げるように立ち上がると少し空気が揺れた。

きっと桐谷が笑ったんだろう。




「四限目、来ない?」


いつものように確認すれば、行かない、と予想通りの返事。