引き出しから教科書を取り出し、エナメルバッグに詰めていく堤くんを見ながら、わたしは日誌を開く。
ストライプ柄のシャーペンをカチカチ鳴らした。
「そういえば、大会っていつから?」
「今週の土曜が開会式で、俺たちは日曜から試合」
「そうなんだ、頑張ってね」
「おー、ありがとう」
爽やかにそう言い、肩にエナメルバッグを掛ける。
風によって窓が、カタカタと小さく音を出した。
ガラス一枚向こうのグラウンドでは、陸上部が石灰で白線を描いていた。
そのまま帰っていくのかと思ったけれど、堤くんは立ったまま動かない。
「……堤くん、どうしたの?」
じっと床を見つめていた堤くんに声をかけると、その瞳がこっちを向いた。
窓から入ってくる光で、スポットライトが当たっているかのように堤くんは輝いていた。
見ているわたしとしてみれば、ただただ眩しい。
そんなことをぼんやり思っていると、不意に堤くんが口を開いた。
「松村」
「ん?」
「あのさ、……」
言いかけて口を噤む。
そんな堤くんに首を傾げた。